


定年後に何か新しいことを始めたいと考える方は多いのではないでしょうか。
今回は女優 大場久美子さんと埼玉県内でシルバー人材センター事業などを展開する「いきいき埼玉」の矢萩善英氏が、
年齢を重ねて新たなことにチャレンジする魅力を語ります。
チャレンジする原動力は、
「誰かのため」に
女優・心理カウンセラー
大場 久美子 氏
年齢は財産、これまでの経験は
とても価値あるもの
―女優として知られる大場さんですが、最近は多彩な活動をされているそうですね
大場 はい、女優・歌手業のほかに、心理カウンセラー、セラピストの資格を取得し、芸能活動以外のお仕事も幅広くさせていただいています。またお仕事とは違いますが、動物が大好きでアニマルボランティアの活動もしています。
矢萩 本当に多岐にわたって活躍されていますね。何かきっかけがあったのですか?
大場 若い頃から芸能活動をしていたので、ずっと学びたいという想いはあったのですが、コロナ禍で始めたYouTube配信が大きいです。自分のチャンネルの企画として、何かに挑戦しようと思い立って、1年間で100の資格を取得しました。
矢萩 すごい行動力ですね! その情熱はどこからくるんですか?
大場 いつも見てくださるファンの方に喜んでもらいたい、その一心でした。幼い頃から両親に「困っている人がいたら、困っていない人が助けるんだよ。元気じゃない人がいたら、元気な人が助けるんだよ」と言われて育ってきたものですから、自分が頑張ることで誰かの力になれたら、と。でも逆に私もファンの方から元気をもらっているんですよ。そんな素敵な循環が、新しいことにチャレンジし続ける原動力になっている気がします。
一歩踏み出すには「きっかけ」がいる
公益財団法人 いきいき埼玉
埼玉県シルバー人材センター連合
就業促進部長
矢萩 善英 氏
年齢は背番号、新しいことに
どんどんチャレンジしてほしい
―新しいことを始める時は、楽しさと同時に難しさもありますよね
矢萩 とくに年齢を重ねると、新しいことを始めたくても腰が重いと感じることもあると思います。大場さんはハードルを感じることはありませんでしたか?
大場 芸能以外のお仕事をすることに対しての迷いはありました。でもある時「今は芸能人も芸能の仕事だけをしていればいいという時代じゃない。臆せず色んなことをやってみたら?」と励ましていただいて。それからは、「今日はセラピストです」「今日はカウンセラーです」と、堂々と言えるようになりました。でも私も自分から踏み出すのは苦手なので、皆さんの気持ちがとてもわかります。何かきっかけがあるといいですよね。
矢萩 そうですね。実は私たち公益財団法人「いきいき埼玉」がご提供したいのが、まさにシニアの方が一歩踏み出すための“きっかけ”なんです。私たちは活動する、学ぶ、働くといった3つのキーワードを軸に、埼玉県に住むシニアの方が夢中になれる取り組みのご紹介を通じて、いきいきと毎日を送っていただけるような幅広い事業を展開しています。とくに私のいる部署は、シルバー人材センター連合として、日々元気に働く高齢者のお手伝いをしています。
大場 それは心強いですね。私も埼玉出身というご縁で、2022年のシルバー人材センターのイベントで講演をさせていただきましたが、私と同年代、もっと先輩世代のシルバー人材センター会員の皆さんがとても明るく元気だったのが印象的でした。まさにシルバー人材センターで働くという素敵なきっかけを通じて、ご自身が心から打ち込める活動に出会えているからなんでしょうね。
色んな「やってみたい」が叶うコミュニティ
―シルバー人材センターに入会すると、どんな活動に参加できるのですか
矢萩 60歳以上で、何かしら仕事をしていたいという方には、県内のシルバー人材センターの登録を通じてお仕事のご紹介などを行っています。
大場 シルバー人材センターという名前はよく聞きますが、具体的にはどんな仕事ができるんですか?
矢萩 ご案内しているのは、臨時的・短期的なお仕事が中心です。月に10日、週20時間程度など、ご自身の希望に合わせた仕事をお選びいただけるので、ご都合や体力に無理のない範囲で働きやすいのが特徴です。ちなみに昨年度、埼玉県はシルバー人材センターの労働者派遣事業の契約金額が全国で1位だったんですよ。
大場 全国1位! それだけ埼玉にはアクティブなシニアが多いということですね。
矢萩 お仕事のご紹介の他にも、「趣味をもっと深めたい」という方にはさまざまなサークル活動をしているシルバー人材センターもあります。例えば、手芸や民謡、英会話、初めての男の料理教室など。サークルに所属することで、気の合う仲間が見つかったという声も多いです。
大場 魅力的な講座がたくさんありますね。最近はおいしいお酒を飲むために男性たちで集まってアテをつくるのが流行っているとか。私も料理が趣味なんですが、簡単な料理がつくれるだけで楽しみ方が広がりますよね。
社会の中で役割があることのよろこび
―仕事やサークル、ボランティア活動を通じて、定年後に社会参加する魅力は何だと思いますか
矢萩 とくに長年お仕事をされてきた男性は、退職した瞬間に社会から取り残されてしまったような気持ちになる方も多いようです。それはコミュニティに所属することが、生きることと深く結びついているからだと思います。だからこそ、何かしらの形で社会とつながる機会を持つことは、人生をより良く生きる上で大切だと考えています。
大場 そういう意味では、私にとってお仕事をすることは、いきいきと楽しく生きるための重要な要素だと感じています。自分の知識や経験を活かして、誰かに喜んでいただいたり、頼りにしていただける。そんな活動を通じて、自分には社会で役割があるんだと思えることが、自信や生きがいになっているからです。
矢萩 シルバー人材センターの会員さんも、街中のお掃除や学校の草刈り、中学生の自転車無料点検といったさまざまなボランティア活動を通じて、地域に貢献されています。大場さんのように人の役に立ちたいという想いが、大きな力になっているんですね。
大場 素敵ですね。年齢を言うことをためらう方もいますが、私は、「年齢は財産」だと思っているんです。私たちが時間をかけて培ってきた経験はすごく価値あるもので、その経験が求められる機会は必ずあるはずだと思っています。
矢萩 会員さんの経験は、まさに社会にとっての財産だと感じています。私は「年齢は背番号」みたいなものだと思っていて、社会というチームに参加する上での番号にすぎないのではないかと思うんです。だからぜひ、胸を張ってフィールドに立ってほしいですね。
ヒントは「自然と笑顔になれること」の中に
―最後に、新しいことにチャレンジしてみたいという読者へアドバイスをお願いします
大場 ご自身が自然と笑顔になってしまうこと、身近な「好き」を見つけてみることから始めてみてください。きっとそこに、ワクワクの種があるはずです。私も50歳からやっと第二の人生を歩き始めたばかり。これからもっと色々なことにチャレンジしていくつもりなので、みなさまと思いは一緒にさまざまな活動を楽しめたらと思っています!
矢萩 シルバー人材センターでは、新しく仲間になってくださる方を常時募集していて、働くことはもちろんですが、サークル活動や楽しいイベントなども開催しています。「何か始めてみたいけど、何からやればいいかわからない」という方は、まずはぜひ一度、お問い合わせいただき、足を運んでいただきたいです。
大場 この秋も楽しいイベントが開催されるんですよね。
矢萩 はい、11月19日に大宮のソニックシティで『シルボンヌ全国大会』というイベントを開催します。シルボンヌというのは女性会員さんの愛称で、シルバーとフランス語のボンヌ(親切な・お手伝いさんの意)を組み合わせた造語です。当日は主に女性の方に楽しんでいただけるような催し物をたくさんご用意しています。メイン講師にTRFのダンサーSAMさんをお招きし、トークイベントやエクササイズ体験などを行う予定です。女性の入会が増え、シルボンヌの更なる活躍を期待しています。